GLOSSARY

数字・A〜Z

199培地

1950年にParkerによって発表された培地で、ニワトリ胚筋肉組織の生存日数を指標にして、アミノ酸、ビタミン、核酸塩基など種々の物質を添加して作製されました。組成は複雑ですが、高等動物の培養に適しています。
現在はワクチン製造や組織・器官培養によく使用されています。
平衡塩類の違いにより199-Earleと199-Hanksに分かれます。199-Earleは5%CO2下、199-Hanksは通常の大気で使用します。

3次元培養

3D培養とも呼びます。従来の培養はフラスコやシャーレといった平面での培養であったため、縦方向の培養が出来ず、細胞が2次元的にしか培養できませんでした。しかし、生物の体は一般的には3次元的な立体構造で構成されているため、より生体に近い培養環境を整えるために開発された培養法です。3次元培養を行なうと、細胞の機能が向上するなどの報告が多く発表されています。

Alpha-MEM培地

1971年にStamersらによって発表された培地で、マウスとハムスターのHybrid Cell研究のために作製された培地です。MEM培地に比べて、8種類のアミノ酸と4種類のビタミン、ピルビン酸を添加した組成となっております。

BME培地

1955年にEagleが哺乳動物の培養に適するように、最も簡単な組成でアミノ酸、ビタミン類の最適濃度を組み合わせて作製した培地です。大部分の哺乳類や鳥類の培養に使用されます。
平衡塩類の違いによりBME-EarleとBME-Hanksに分かれます。BME-Earleは5%CO2下、BME-Hanksは通常の大気で使用します。
BMEは、Basal Medium for Eagleの略号です。

BPE

Bovine Pituitary Extract(ウシ脳下垂体抽出物)の略です。細胞成長因子やホルモン類を豊富に含んでいるため、血清代替品としてよく使用されます。上皮細胞や血管内皮細胞などの培養に特に適しています。

CD培地

すべての組成が化学的に明らかになっている培地をCD培地(Chemically-Defind)と呼びます。

CellLine

細胞系のことを指します。数代にわたり継代が可能なものを細胞系(Cell Line)と呼びます。
Cell Lineの中から無限の増殖能を獲得している細胞を樹立細胞系(Establish Cell Line)、更に細胞系から選択培地などでクローニングで得られた細胞であり、特別な性質などが安定的に保持されているものを細胞株(Cell strain)と呼びます。

contact inhibition

正常な細胞は、同種の細胞や培養容器に接触すると増殖を停止します。
このことを接触阻止(contact inhibition)と言います。形質転換した細胞ではこの機能は失われています。

CPD

細胞集団蓄積倍化数のことです。意味的にはPDLと同じです。
正常細胞では、ある一定の分裂回数を経て老化、死滅することから、継代数に比べてより厳密な細胞履歴の管理方法として利用されています。
一般的には、log(培養終了時の細胞数/培養開始時の細胞数)×3.33で算出した値を累積していきます。
例えばPDL=15の細胞を継代し、数日培養後、次回の継代時に上記計算式によって算出した値が3であればこの時のPDLは18となります。

D-MEM培地

1959年にDulbeccoによって発表された培地で、初代あるいは2代マウス胎児細胞におけるポリオーマウイルスのアッセイ用に開発されました。MEM培地に比べて、アミノ酸量が2倍、ビタミンが4倍量含まれており、現在、最も汎用される培地の1つです。
グルコースの濃度により、低グルコース(1.0g/Lグルコース)と高グルコース(4.5g/Lグルコース)の2種類があります。
一般的に低グルコースは5%CO2、高グルコースは10%CO2下で培養します。

Doubling Time

細胞集団倍化時間(倍化時間)のことです。対数増殖期の細胞数変化から算出します。
培養時間×log2/増加した細胞数から算出します。

ECM

Extracellular Matrix(細胞外マトリックス)。病理的には細胞と細胞の間を埋める高分子化合物の総称であるが、細胞培養的には、細胞と培養容器との接着に関与する物質を指すことが多いです。コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンなどが著名です。

EC細胞

Embryonic Carcinoma cellの略です。主に精巣や卵巣などの生殖器官に発生する奇形腫から得られた細胞です。ES細胞と同様にほぼすべての細胞に分化できる多能性を持った細胞です。

Epithelial-liked Cell

上皮様細胞。病理組織では上皮組織を構成する細胞であるが、組織培養的には敷石状に増殖する細胞を形態的にこう呼びます。

ES細胞

Embryonic Stem cellの略です。受精卵の胚盤胞内部細胞塊(ICM)から得られる、ほぼすべての細胞に分化できる多能性を持った細胞です。受精卵から得られる細胞ですので、ヒトES細胞の樹立、研究には倫理的問題も含めて多くの解決すべき問題があります。

Fibroblast-liked cell

繊維芽細胞細胞。病理学では細胞と細胞や組織と組織の間を埋める繊維性結合組織を構成する細胞を指すが、組織培養的には細長い紡錘状の形態で増殖する細胞をこう呼びます。

Growth Curve

増殖曲線のことです。細胞が増殖していく過程である遅延期、対数増殖期、定常期、死滅期をプロットしたグラフのことです。

Ham's F10培地

1963年にHamによって発表された培地で、ハムスター細胞を中心に検討し、ごく少量のタンパク質(100μg/mL)を補足するだけで高いコロニー形成率が得られるように考察されています。

Ham's F12培地

1965年にHamがF10培地を更に改良し、タンパク質を補足しなくても高いコロニー形成率が得られるように考案された培地です。

HAT培地

骨髄腫細胞と抗体産生細胞との融合細胞(ハイブリドーマ)を選択的に増殖させるための補助培地。ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンから構成されます。

HeLa汚染

1980年代以前に樹立された細胞には、ヒト子宮頚部癌由来細胞のHeLaが混入していることがよく認められます。
これは、実験設備が整っていなかった時代に、最も標準的なヒト由来細胞であったHeLaと同時に目的の細胞を培養していたため、誤って目的の細胞にHeLaを混入させてしまったことが原因であると推測されています。実験設備が整った現在においても、実験者の技術習熟度や他細胞混入に関する意識レベルが低いことが原因で、細胞同士の混入が認められています。

Heteroploid

生物種に固有の基本染色体数とは異なる染色体数のことです。
培養細胞では、一部の細胞を除き異数体となっています。

L-15培地

1963年にLeibovutzによって発表された培地で、CO2を使用しなくてもpH調整ができるように考案されております。
したがって、5%CO2下で培養を行なうと培養液が黄色くなりますので注意が必要です。

McCoy5a培地

1958年にMcCoyによって発表された培地で、株細胞や初代培養細胞ともによく増殖する培地です。RPMI1629とはほぼ同じ組成となっています。

MEM培地

1959年にEagleによって発表以来、最も多く使用されている培地の1つです。
Eagleらは、培養液中のアミノ酸濃度と細胞内の遊離アミノ酸含量との関係を調べ、細胞内の遊離アミノ酸濃度に近い最小必須量のアミノ酸濃度を算出して作製された培地です。
平衡塩類の違いによりMEM-EarleとMEM-Hanksに分かれます。MEM-Earleは5%CO2下、MEM-Hanksは通常の大気で使用します。
MEMは、Minimum Essential Mediumの略です。
最小必須量のアミノ酸しか含まれていないため、アミノ酸要求性の高い細胞などには、MEM用アミノ酸、MEM用非必須アミノ酸などの補助培地を別途添加して使用します。

MS細胞

組織と組織の間に存在する多分化能を持った細胞です。Mesanchymal Stem Cell(間葉系幹細胞)とも呼ばれます。骨髄や脂肪などには比較的多くの幹細胞が存在することが最近の研究により明らかとなってきました。ES細胞のように受精卵を使用せず、各個人の生体から得られるため、倫理的な問題点が少ないので新たな再生医療のソースとして注目されています。

Passage

継代のことを指します。細胞の培養容器を別のものに植え継ぐこと。
一般的には接着細胞をトリプシン処理した後、別の容器に移すことを指します。

PDL

細胞の分裂回数のことを指します。正常細胞では、ある一定の分裂回数を経て老化、死滅することから、継代数に比べてより厳密な細胞履歴の管理方法として利用されています。
一般的には、log(培養終了時の細胞数/培養開始時の細胞数)×3.33で算出した値を累積していきます。
例えばPDL=15の細胞を継代し、数日培養後、次回の継代時に上記計算式によって算出した値が3であればこの時のPDLは18となります。

RGDペプチド

細胞接着因子の接着部位に存在するアルギニン、グリシン、アスパラギン酸のアミノ酸から成るトリペプチドであり、細胞接着活性を持っています。細胞表面の受容体(インテグリン)がRGD配列を認識することもわかってきました。

RPMI1640培地

1967年にリンパ球培養のためにRoswell Park Memorial Instituteにより開発された培地で、その頭文字をとってRPMIと名づけられました。リンパ球の培養に最も汎用される培地です。

Split

継代のことを指します。細胞の培養容器を別のものに植え継ぐこと。
一般的には接着細胞をトリプシン処理した後、別の容器に移すことを指します。

Split Ratio

継代比率。細胞の播種密度や増殖性の判断材料となります。
Split Ratio=1:2は、例えばT25フラスコにサブコンフルエントになった細胞を継代するときに、T25フラスコ 2本に植え継ぐことを指します。したがって、1:2と1:10では、1:10の細胞のほうが増殖性が良いことになります。
異なる面積の容器に植え継ぐ場合には、面積比率で考慮します。(例:T25フラスコ→100mmシャーレの場合にはSplit Ratio=1:3)

Subculuture

継代のことを指します。細胞の培養容器を別のものに植え継ぐこと。
一般的には接着細胞をトリプシン処理した後、別の容器に移すことを指します。

SV40

Simian Virus40の略号です。ポリオーマウイルスの1種で、動物細胞を形質転換させる働きがあります。
細胞培養によって増殖させることが困難な細胞に対して、SV40を感染させると無限増殖能を獲得することから、初期の細胞にはSV40で形質転換させた細胞が多く存在します。